[　suilent　]

短文「Serenade」

クローム
並盛転校の朝

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フレンチトーストの夢を見ていた。

そこは、「凪」の家のダイニングキッチンで、
窓からは色もかすむ白い光が差し込んでいた。
まろやかな朝、テーブルの四方を、私、犬、千種、そして骸様が囲む。

私達の真ん中には、一斤まるごとのフレンチトーストが、ただ一皿置かれている。
てっぺんにはバニラアイスが一盛り、
ミントの小さな葉が一枚、溶けかかった乳色をすべりおりた。
ほかほかの湯気を上げるその正方形を、千種が器用に四等分に切り分ける。
犬はフォークとナイフを握り、今か今かと身を乗り出す。
骸様は、ただ穏やかに微笑んで、犬と、千種を、順繰りに見遣る。
3人が同じテーブルにいることに、私は心から安堵し、喜びで胸を膨らませた。
ふんわりと立ち上る甘い香りが空間を満たし、呼吸がそれをゆるくかき混ぜる。
「家族」の食卓がそこにはあった。

骸様がふいにこちらを向く。
頬杖をついたまま、惜しみない平穏さで私に言った。

「ここから出ていくように」


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BGM 「Loving You」Minnie Riperton