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[ suilent ]

REBORN!の骸髑雲メインの二次創作ブログ。更新停滞中。

SS12:骸と千種 僕なら、きっと、

短文「僕なら、きっと、」

骸と千種
クローム並盛転校の前夜



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骸は、自身の顎に当てていた手をはずして、たった今思い付いたかのように言った。

「千種、何か、書くものを」

背後、肩ごしに手の腹を見せれば、ガザゴソと物探しの音がする。
ややあって渡されたのは、鉛筆が一本。

利き手の指先に納めると、握った感触がやけにでこぼことしていた。
歯型。
犬が噛んだな、と無意識に眉根が寄ったが、まあ書ければいい。

今はたったひと言書ければそれでいいのだ。

「紙はありませんか?」

空いた手を上げれば、またガサゴソと音がして、ビリリと紙が裂ける音。

「これでいいですか」

「何でもいいです」

肩越しに寄こされたそれを、見もせずに受け取ろうとすると、わずかにタイミングが外れた。

はらり、はらり、くるり。
踊って散る花弁のように、罫線ノートの切れ端がゆっくり床に落ちた。

5センチ四方の白い可憐な舞いを見届けてから、ゆっくり屈んで手を伸ばす。
拾い上げようとして、僕は、指先を、ひっこめた。
すり抜けて落ちたものをわざわざ自分の手で拾い上げることが、急に馬鹿馬鹿しくなったのだ。
緩慢な動きで上体を起こして、僕は僕の手足のように彼を使うことにした。

「千種。千種が書いてください。僕の言うとおりに」

「分かりました、骸様」

差し出した鉛筆を受け取った千種が、その長身を面倒そうに折りたたんでしゃがむ。
床に居残ったままの紙を何のためらいもない仕草で取り、僕の口から綴るべきメッセージが吐露されるのを待っている。

僕は、本人を前にしてはとてもそれだけでは通じないような、ただそれだけでは全く足りない言葉を遺すことにした。
無意識レベルの『力』すら届き辛い今、言葉などで伝わるわけがない。
彼女の問題だ。
どうすることもできない。

「『出て行くように』…と、書いてください」

千種とここで目が合った。
続く文を待っているようだった。

「『出て行くように』です」

「…わかりました」

千種はひらがなで綴った。
一文字一文字がつたない。
彼は面倒くさがるくせに面倒見が良く、それを僕は、優しいと思う。

僕なら、きっと、イタリア語で書いた。



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BGM「秋の気配」
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