SS4:6996182008-10-29 Wed 22:00 SS3:699618の補足。 SS6として更に続きます。更新は3日を予定。 ==== 彼女はベッドの上に凛と背を伸ばして座していた。 いつもの片目に医療用の眼帯、もう一つの片目は閉じたまま。 耳にガーゼを当て、腕にも傷、おそらく足にも、体にも。 「誰?」と問われても雲雀には答えようがなかった。 彼女は目を閉ざしていたので僕の顔を見ることはかなわなかったし、耳もどうかしてしまっていて僕の声を聞き分けることも出来なかった。 敵意がないことを示すためにはどうしたらいいかと少し考えて、僕は彼女の縮んだ手を取って、そっと頭を撫でた。 「…むくろさま?」 その問いにも答えようがなかった。 僕は骸ではない。 だが、それを正直に示してしまえば、彼女の細く立った背は絶望に折れるだろう。 そう。薬みたいなものだ。 緊張で尖った神経をなだめるための、鎮静剤みたいなものだ。 ただ一晩だけでもいい。彼女が心安らかに眠り、傷ついた体を深く休めることが出来るなら。 そう自分の胸に言い聞かせて、唇を重ねた。 誰かの代わりになるつもりはない。 君が誰かを僕に重ねていたとしても、それは君の勝手だ。 僕の知ったことじゃない。 彼女の舌がまだ足りないと求めてくる。 応じるさ。 どこまでも。 君が今望むものを、今与えてあげる。 僕に出来るのはそれだけで、今それが出来るのは僕だけだ。 劣情に揺れたところで、鉄と塩水の生臭い味が口腔に広がった。 行き場を無くした理性はずっとそこにあり、 ただ、僕はずっと、切り裂かれたような気分でいた。 ==== SS3はクロームが骸だと思ってればいいだけの話。SS4は雲雀がそれを狙ってやったんですよという話。マゾっ気あるな、雲雀。 もうちょっと続きそうです。すみません。 SS | |